プロローグ

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『何故てめえらは【人払い】が効いていない? いや、それ以前にてめえらはなにもんだ?』 「アンタ、これ、知ってるか?」 悪魔の問いには答えず、問いで返す漆黒の男。その手には、男の首からさげられているチェーンのネックレスがある。それにはシルバーでできた小さな十字架がついており、十字の交差部分には血のように赤いルビーが光っている。 『なんだァ、それは? 俺は吸血鬼じゃないんだぞ。そんなチンケなモンじゃ倒せねえよ、ゲハハハハ!』 「あれま、知らないのか。 おい、お前に気付かないのはともかく、連中のことすら知らないってことは、生まれたばっかりっぽいぞ」 男の後半の台詞は、すぐ横にいる女に向けられていた。 「ふぅむ、そんなところじゃろうと思ったよ。臭いがまだこの世界に馴染みきっておらんかったからのう」 応える女の声は若く、蠱惑的であったが、言葉遣いは老人のようだった。
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