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しかし、悪魔は二人のやりとりが気に入らないのか、顔を醜く歪ませ、おそらくは憤怒の表情を浮かべている。
『おい、てめえら! 何、二人で仲良くおしゃべりしてんだ、ブチ殺すぞ!』
「これが仲良さげに見えんの? ほんとに目玉ついてんのか? ……ま、良いや。
おい、そこの姉ちゃん!」
唐突に呼ばれ、女性はびくりと身体を震わせた。
「え、わ、私……ですか?」
「そう、アンタだ。さっきの質問の答えを聞いてない」
さっきの質問。男が現れた時に女性に投げかけたものだ。
女性は一瞬躊躇う。しかし、先程の死への恐怖を思い出し、その答えを口に出す決意を固めた。
「私は……」
『いい加減にしろや、ゴミクズ共がァァァァァァッ!!!』
空気を震わせる轟音が響いた。苛立ちが頂点に達した悪魔が男とゴスロリ女がいた場所に飛びかかり、その豪腕を叩きつけたのだ。
『ゲハハハハ! 俺をコケにするからこうなるんだよォ! どの道、潰すつもりだったがなァ!』
「そ、そんな……」
あの鉄骨ほどもある腕で殴られてしまったら、人間など原形すら残らず、ミンチにされてしまうだろう。
一筋の希望が見えていた女性は、人の命の呆気なさに絶望した。
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