寂しがり屋

2/2
前へ
/71ページ
次へ
ふと、読書中の彼に話しかける。 「ねぇ、ネズミ」 「……」 「ネズミってば」 「……」 「ネズー…」 ―ミ、と言う前に、読んでいた本を勢いよく閉じ、乱雑にその辺へと放る彼。その衝撃で、近くに重なっていた本の山が一つ崩れた。 「あんたさっきからうるさい、少し黙ってられないの?おれ読書中だったの、わからない?」 「…だって、」 「だっても何もない…で、なんなんだよ」 「あ、うん。あのね…キ、キスして欲しいな、って…」 「……」 「…だめ?」 はーっ、と深いため息と共に腕を強く引かれる。 「陛下は寂しがり屋なのですね」 「ち、ちがっ…」 否定しようとする唇を塞がれる。勿論、彼の唇で。 くすっ 「…嘘はいけませんよ、陛下」 「なんっ……」 「ずっとおれに構って欲しかったんだろ?最近ご無沙汰だったもんな。いいぜ、読書の邪魔されたんだ。お礼にたっぷり可愛がってやる」 「ちょっ、ネズミ……!」 ネズミの手が、僕の服の中に侵入してくる。あぁ、もう。こうなった彼は止まらないのだ。…諦めて、彼に身を委ねよう。 寂しがり屋 久々に触れる彼の少し低い体温に、自身の身体が火照るのも気づかない振りをして、紫苑はネズミの首に手を回したのだった。 ‐END‐
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加