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ふと、読書中の彼に話しかける。
「ねぇ、ネズミ」
「……」
「ネズミってば」
「……」
「ネズー…」
―ミ、と言う前に、読んでいた本を勢いよく閉じ、乱雑にその辺へと放る彼。その衝撃で、近くに重なっていた本の山が一つ崩れた。
「あんたさっきからうるさい、少し黙ってられないの?おれ読書中だったの、わからない?」
「…だって、」
「だっても何もない…で、なんなんだよ」
「あ、うん。あのね…キ、キスして欲しいな、って…」
「……」
「…だめ?」
はーっ、と深いため息と共に腕を強く引かれる。
「陛下は寂しがり屋なのですね」
「ち、ちがっ…」
否定しようとする唇を塞がれる。勿論、彼の唇で。
くすっ
「…嘘はいけませんよ、陛下」
「なんっ……」
「ずっとおれに構って欲しかったんだろ?最近ご無沙汰だったもんな。いいぜ、読書の邪魔されたんだ。お礼にたっぷり可愛がってやる」
「ちょっ、ネズミ……!」
ネズミの手が、僕の服の中に侵入してくる。あぁ、もう。こうなった彼は止まらないのだ。…諦めて、彼に身を委ねよう。
寂しがり屋
久々に触れる彼の少し低い体温に、自身の身体が火照るのも気づかない振りをして、紫苑はネズミの首に手を回したのだった。
‐END‐
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