129人が本棚に入れています
本棚に追加
わ、わ~
こおりだ君だ…
せっかく同じクラスになったんだ。
あたしの存在を知ってもらいたい。声を聞いてみたい。お話がしたい。
いろんな好奇心が、さくらの行動力を湧かせる。
駆け寄ってみると、楓の背中が目の前にあり、自分の目線より高い所に肩があった。
『あ、あの…!こおりだ君…だよね//』
振り返ってさくらに視線を落とす
少し長い前髪の隙間から目が覗く
楓
『…ひだ です。』
さくら
『へっ………ごめんなさい、ひだって読むんだ!』
やってしまった。初っ端から相手の名前を読み間違えるというミス。
あわあわしているさくらを見下ろしたままの楓。
怒っているのか、それともなんとも思っていないのか。
楓
『…で、何?』
憧れの人に初めて声をかけたこの時間を楽しむ暇さえ与えない、シンプルな質問が返ってきた。
さくら
『え…いや…なんでもない…です。』
上から見下ろされているせいもあってか、無駄話が許されない雰囲気がただよっている。
さくら
『あ…じゃあ、あたし家あそこだから、またね。』
楓
『俺もなんだけど。』
さくら
『…………え…?!』
楓
『ああ。やっぱりまだ聞いてなかったんだ。』
さくら
『え…どおいうこと?!』
楓
『ではお先に…゙お嬢様゙。』
固まるさくらをからかう様に
前髪の隙間から見える目が意地悪く笑っていた。
さくらは、楓が我が家に入って行くのを見届けることしかできず、肩から鞄がぼとっとずり落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!