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「バットエンドね……。それならまず、俺たちがその天命から逃れたいもんだな。」
すると山科は、いつものふざけた口調から急にトーンを落として言ってきた。
山科は続けて言葉を発する。
「だいたい……あれだろ。」
「なんだよ。」
コイツ、また例の言葉を発するんだなと予測して功刀は自然と体を強張らせる。
功刀自身小説を書いている時に節目節目でよぎったあの不安を、山科は言葉にすることで空気に溶かして少しでも気を楽にしたいのかもしれない。
「――俺達には後がない。」
「そんなのは……わかっているつもりだけど。」
今この部屋にいる中で切羽詰まっていない人間はいない。
そんなことは。
嫌というほど、嫌になるほどわかっている。
「…………。」
精一杯、小説やらマンガに逃げて忘れていた絶望が、今になって空気として肺を圧迫してくる。
緊張が顔の筋肉から柔軟を奪う。
しばらくすると動かないことが辛くなって、沈黙のまま鍵の掛かった勉強机の引き出しからノートパソコンを取り出した。
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