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語り部
山科が、あのゲームの事を知ったのは数年前のことだった。
死んだ祖父の遺品を整理していた際に、《AristotelesTicket》を見つけたのだ。
正直言って、祖父の性格は最低であり他に類を見ないほどのクズっぷりから、そんな人間の遺品なんて触りたくもなかったのだが、その遺品だけは異様な魅惑のようなものを放っていた。
「アリストテレス……チケット?」
名前はともかく、あんな携帯すら使いこなせない古臭い祖父にPCなんていう最新機器は間違いなく用途過多だったため、その違和感から山科は迷いなくPCを開いた。
電源ボタンを押すと、画面にはパスワードだけを入力する画面が現れる。
「パスワードか……。ますます怪しいな。」
パスワードは10分ほどでPCの電源カバー裏に挟んであるメモ帳から発見した。
――カタッ、タタタッ。カチッ。
「開いた……。」
ログインが完了すると、自動的にすぐ通信が始まった。
少し調べてみると、これは家の中のLANではなく衛星との接続によっているようだ。
山科はページが進むごとに自分が物語の主人公になったような緊迫感を持ちながらマウスを操作し続ける。
廊下に誰か近付いてきていないかと耳も立てるが、流石に葬式の準備で忙しいのか近くには来ても部屋に入ってくる気配はない。
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