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語り部
『その真実が全て神によるものなのであれば、俺は誰を恨めばいいのだろうか。愛すべき人を殺した加害者本人か、それとも神なのか。その答えが出ないまま、俺は……。死刑執行となった。』
――カタカタカカタカッカタ。
――タタンッ。
エンターキーが最後を締めくくる歓声のように、軽やかに響いた。
「ふぅ……。よしっ。終わった。……終わったんだっ!!」
功刀葵(くぬぎ あおい)は書き終えた原稿を、ショートカットキーで保存しながら体が火照ってくるのを倦怠感とともに感じていた。
数ヵ月の間何度も書き直した小説が完成するというのは、達成感も大きかったが、その期間も終わってしまったような気がして、若干複雑な気持ちだ。
「んっ……!!」
指をからめて掌を天井に向けることで、大きく伸びをする。
「お~、功刀。いよいよ終わったわけだ。おつかれ~~。」
背後から、数時間ベッドで黙り込んでいた山科 賢(やましな けん)の声が響く。
当の本人は、功刀の部屋にある1,000冊近いマンガを読んでいたので無口であったことに対してストレスを感じていたような声色は感じられない。
「おう。これでいよいよ、文述社の新人賞に応募できるぜ。長かった!」
以前物置から引っ張り出した椅子を180度回転させながら山科に向けて言った。
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