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古い椅子な為、ゴリゴリとかギシギシといった錆びた金属音が体中に響く。
「あとは、受賞するだけだな。」
腹ばいの山科は、読んでいる途中の《エデンの檻》に親指を栞代わりにしながら言った。
「簡単に言うなよ。小学校の絵心コンクールとは違うんだ。」
「たしかにそうか。お前、美術1だったしな~。芸術性ゼロってやつだ。」
「美術は関係ないだろ。」
「お前が言ったんだよ。」
ふう。っと、呆れだか、諦めだか、大した意味もないため息もついでにされた。
「とにかく。これでもう期限も間に合ったし後は印刷するだけだ。だからさ、《あれ》見ようぜ。あれ。」
そもそも、1人で集中すべき場面に小学校からの付き合いである山科がいるのは《あれ》がいよいよ今日開催されるからだ。
「功刀。今、時間は?」
山科はいつの間にか、エデンの檻に目線を戻していた。
あの巻はたしか、登場人物が島に食べられる話だったか。
「22時14分。」
パソコンのデスクトップに表示された時計を見て答える。
「そうだ。22時14分だ。」
「……なんだよ。何が言いたげだな。」
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