アリストテレス《序章》

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 たしかにこの作品は全てがオリジナルなわけではない。  実在する《ある宗教》の考え方を参考にした小説なのだ。  その宗教の名前は通称『ルドラ』。  功刀自身よく調べたわけではないが、要約するなら《神を殺すことを思想とする宗教》である。 「っていうか、ネーミングセンスは悪くねぇし。センスがないのはお前だよ山科。」  功刀はこの作品名には誇りに近いものを持っており、それだけは何があっても譲るつもりはなかった。 「まずそのセリフにセンスがないと思えるけどな。あとそれに、だ。なんでバッドエンドなんかにしたんだよ。やっぱりハッピーエンドの方が楽しいだろ~。」  山科はここぞとばかりに言いたいことを機関銃のように撃ち続けてくる。  功刀は山科の性格から予測はしていたもののやはりショックというか、書き終えた後になるがモチベーションはかなり下がってしまい、自然と顔が下を向く。  そしてそのままの姿勢で口をとがらせながら言った。 「なら最初から言えよ。だいたい、この話には誰が死んでもバッドエンドに変わりはない。」  絶望マーチのあらすじは、事故死した主人公の婚約者をその運命に運んだ神を殺すことで復讐を果たそうというものであり、結局はそれは失敗に終わり主人公が死刑となるのがオチとなっていた。  もちろん、主人公の神殺しが成功した場合も考えなくはなかったのだがそれでは結末が世界が滅ぶというオチになってしまい、それだったら主人公に死んでもらおうということで落ち着いたのだ。  神があるから世界が存在すると考えるなら、神が死ねばイコール世界の滅亡ということだといえば理解しやすいかもしれない。
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