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場面は綺那の方に戻る。
「綺芽太夫~、お座敷やで~。お客はんはお得意さんで羽振りがえぇから、たのむわー。」
『はい、わかりました。』
羽振りのいい客とは、どんな人なのだろうと思いながら、綺那はスッとふすまを開ける。
『太夫の綺芽どす。今日はよろしゅうお頼申します。』
三つ指を立てて礼ををすれば、中に入る。
中には、2人の種類の違う美丈夫がいた。
「おぉ、こりゃあ上玉じゃねぇか。」
「ふぅん、太夫と言うだけはあるね。」
『おおきに...お侍はんの名前を聞いてもえぇどすか?』
フフと上品に笑いながらも、小首を傾げて聞く綺那。
「俺ぁ、高杉晋作だ。よろしくな、綺芽。」
こう言って、綺那をグッと引き寄せる、少し小柄な役者のような美丈夫は、高杉晋作であった。
綺那は内心笑みを浮かべては、高杉から離れて、もう一人の土方と並ぶくらいの美丈夫の方を向いて名前を聞く。
「俺は、吉田稔麿。」
綺那は、いきなり長州の重要人物と会えたことにほくそ笑んだ。
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