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綺那が、裏口から屯所に入れば、自分の目当てである土方の部屋は何やら騒がしかった。
『..土方さん、綺那です。入っても大丈夫ですか?』
「..お、おう。入れ。」
綺那がふすまを開けると、何者かが綺那に飛びついてきた。
綺那は、受け止めきれずに床に押し倒される形になる。
「綺那ちゃん、無事?何もされなかった?」
綺那に飛びついてきたのは平助だった。
『へ、平助君。大丈夫だよ..それと、離れてくれるかなぁ?』
「え?..あ、悪ぃ!!」
あわてて綺那の上から退く平助。
「平助、私を差し置いて綺ちゃんに抱き着くとはいい度胸ですね。」
平助の後ろで黒い笑みを浮かべる総司。
綺那の方を向けば、ニコニコしながら、おかえり。と言う。
「そうだぜ、平助。お前だけ役得してんじゃねぇよ。」
「おいおい、三人とも。そろそろ綺那を中に入れてやれよ。綺那は報告しに帰ってきたんだろ。」
呆れながらそう言って、綺那を部屋の中に入れてやったのは、唯一の常識人の永倉である。
『ありがとうございます、永倉さん。』
彼がいなければ中に入れなかったであろう綺那は彼に礼を言う。
そこで、綺那は可笑しなことに気付く。
普段なら、怒鳴り散らして三人を説教する土方がやけに静かなのだ。
『土方さん、どうかしたんですか?』
「...もう、疲れた。」
綺那が遊郭に行っていた数刻の内に、土方はかなりげっそりとしていた。
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