84人が本棚に入れています
本棚に追加
涼風の名前を知っているようだが、涼風自身は彼等が誰だか一人としてわからない。
「体育なのに野球になると決まって早く来るよな、秀二ってさ」
名字だけではなく、名前まで知っていた。これでは涼風がおかしいようではないか。彼等はいつもと言った。つまりそれが普通だということだ。
それではさっきまで見ていたものや感じたことは夢や幻だったのだろうか。そんなことはないと思いたい。あの経験が偽物だったなんて思いたくないのだ。
「ああ…、せっかく早く来たんだけど、ちょっと肩が痛くて出来そうにないんだ」
「えっ、大丈夫なの?」
「たぶん。終わりに近づいたら代打で出して」
知らない人に心配されるとは妙な気分だ。よく見てみると彼等は体操服を着ているが、涼風は制服だった。しかもこれも見覚えがない。涼風の学校はブレザーだったからだ。
「制服で出るのか?」
「…体操服を忘れたんだよ」
「じゃあ肩が痛いって嘘なの?」
最初のコメントを投稿しよう!