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『今日の宿題は名前の由来を調べることです!皆、お家で聞いてきてくださいね』
『はーい』
小さい椅子と机、それに座る子供たち。優しい女の先生。廊下には4年1組のプレート。
ありふれた教室の様子。皆ニコニコ元気に返事をしている。その中で一人始終俯いている男の子。
あれは…
これは、夢だ。
早く起きなければ、そう思うのに…
場面が変わって、寂れたアパート。おずおずと扉を開ける男の子。その顔に映るのは、恐怖と少しの期待。
玄関に入ると見える何の変哲もないリビングの扉。そこから洩れるテレビの笑い声。
ドアノブを持つ手が震える。
『…ただいま』
返されることのない、"おかえり"。変わりに向けられる冷たい目。
ランドセルを自分のスペースにおろして、テレビを見ている男に恐る恐る口を開く。
それを聞いたら駄目だ!そう思うのに男の子の口は止まらない。
『お父さん…あのっ、…宿題が出たんです。僕の名前の由来を…教えてくださぃ』
『ハハッ、知りたいのか?教えてやろうか?』
返ってくる言葉に驚いて俯いていた顔をあげる男の子。嬉しい!お父さんが俺を見て、話してくれる!!
『お前の詩音って名前はなぁ、はやくーーっていう意味だ』
…もう、やめて…
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