1024人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぅ~食べた食べた。ごちそうさまです」
「お粗末様です」
お腹をポンポンと叩いて言う淳也に笑って返す。
すると淳也があーとかうーとか言って頬を染めるから何事かと驚いて後ろを見るが、そこには特に何も変わらない俺の部屋があるだけだ。首を捻ると淳也がテーブルに身を乗り出してきた。
「あのさ会長。俺会長に嘘ついたんだ。何でこんな嘘ついちゃったのか自分でも解らないんだけど」
「…嘘?」
「うん。あのさ…俺、本当は黒マリ…いや、転校生のこと全然全くこれっぽっちも好きじゃないんだ」
意を決した様に、言う淳也に嘘をついているような節はない。ないが、どうしてそんな嘘をついていたのだろうか?それに…
「淳也は…セフレという奴との関係を怒られて嬉しかったんじゃないのか?」
単純な疑問。
嘘をつかれたことに怒りや悲しみはない。まぁ人間なんだし嘘の一個や百個くらい日常的につくだろう。俺だって、嘘をついたことはある。だから、真実を知ったって、ただ無感動にそうなのか、と受け入れられる。多分俺には関係ないとどこか冷めた自分が思っているのだろう。
「セフレ…も嘘なんだ。嘘というか、高校に入ってある人に出会ってから辞めたんだ。そういうのは」
「そうか」
「うん、嘘ついててごめん」
「いや、というか何故謝る?」
「どうしてって、悪いことしたから?」
「悪いこと、か」
ふと、笑いが出る。…悪いこと、か。そうかもな。嘘が俺を救ったけど、彼等を救った訳じゃない。俺は最低だ。本当に、ごめん。ごめん、西園寺さん。
「会長、大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫だ。悪い。意識を飛ばしてた。どうする、帰るか?それともテレビでも見るか?」
「んー今日は帰るね。また明日一緒にご飯食べてくれる?」
「あぁ。もちろん」
そっか、と嬉しそうに呟いて淳也が部屋に戻っていく。
…また明日、か。
帰り際に淳也が手を振って言った言葉をポツリと呟く。それは思ったよりも明るい音だった。
最初のコメントを投稿しよう!