おとまり会

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エレベーターを使って一階につくとすぐにトイレに駆け込んだ。 そこにいたのは、小さな少年、山田君。凄く青い顔をして震えていた。 「ほんとにきた」 「あぁ、本当だ。とりあえず、俺の部屋で休まないか?」 「でも…誰かに見られたら」 人気者に近づく者には制裁を。この学園の悪い風習の一つだ。 「そうだな…これを羽織ってくれるか?」 俺は自分の着ていたワイシャツを脱ぎ山田君の頭に被せた。もう6月とはいえ、さすがに下着一枚は肌寒い。 「じゃ、行こうか」 「…ごめんなさい」 俯いて謝る山田君にしゃがんで目を合わせて笑いかけた。 「大丈夫だよ。怖いのは俺が追い払うから」 その瞬間、山田君が涙を零した。子供のように声を上げて泣く山田君に昨日の自分を思い出す。 俺はたまらなくなって山田君を抱きしめた。その瞬間ビクッと大きくはねる山田君に、まさか…と思う。 そして、俺は山田君を抱えて走ってエレベーターに乗り込んだ。 エレベーターが生徒会役員の部屋の階につくと山田君を抱えたまま、俺の部屋に駆け込もうとしてハッとした。 ヤバい。鍵忘れた。あぁ寮はオートロックなのに。俺のバカ。 俺は起きてくれ淳也と思いながらチャイムを鳴らした。 その瞬間開く扉。 「詩音、心配し…その格好…」 「いや、かくかくしかじかで。とりあえず入れてくれ」 「あ、あぁ」 リビングに入って、山田君を下ろす。頭に被せていたワイシャツを着直して、山田君をソファーに座らせた。 「ちょっと待ってて。淳也…」 「あぁ」 来てくれ、という前に来てくれる淳也を連れて寝室に行く。 クローゼットから薬箱を取り出しながら淳也に説明した。 「山田君は転校生と同じ部屋らしい」 「あぁ…なるほど」 「何か知ってるのか?」 同室と言っただけで納得した淳也に首を傾げる。 「いや。俺だったら一日ももたないだろうからな。まりもと同室は」 「?よくわからないけど…多分山田君は怪我をしているから手当てをしてくる。悪いが、しばらくここで待っていてくれないか?」 「それはいいが、詩音大丈夫か?」 そう心配そうにする淳也に苦笑した。本当に何でもお見通しのようだ。
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