1019人が本棚に入れています
本棚に追加
薬箱を持って寝室を出ると山田君が虚ろに宙を見ていた。その姿に胸が痛くなる。
「山田君…誰にされた?」
「な、何をですか?」
「ごめん、山田君。辛いだろうけど言ってくれ…君はいつから誰に暴力を受けてた?」
俺の言葉に目を見開く山田君。
「な…で」
なんで、分かったかって言いたいんだろう。
「わかるよ。わかる。ごめん。気づけなくて」
「ぼっ僕…ふぇっ」
「泣いていい。我慢なんてしないでいい。辛かったな。痛かったな。もう我慢しないでいいから」
優しくゆっくり頭を撫でる。
張りつめていた糸が切れ、子供のように泣き出す山田君をそっと抱きしめ背中をさする。
「なんっで、僕な…の。僕はっ…千晴君なんてっ好きじゃ、ないっのに!!やきもちでっ…叩いてっ…蹴って…こわ、こわがっだ」
途切れ途切れに言葉を紡いで俺の質問に答えてくれた山田君。
「うん、頑張ったな。言ってくれてありがとう」
「ふぇっ…かいちょ~!!」
山田君はわぁーんと泣き出して俺に抱きついてきた。
ぐ~~
泣き声とともに部屋に響いた腹の音。
「山田君、お腹空いたんだね」
「ごっごめんなさい!!最近食べなくても、お腹なんて鳴らなかったのに」
「お腹が空くのは良いことだ。ご飯食べようか。けど、その前に手当てさせてくれ」
「いっいいです。自分で」
「触られたくないのは解る。けど、背中は自分じゃ出来ないだろう?」
「…ごめんなさい」
「謝らないでいい」
そう言いながら、山田君の服をめくりあげて、思わず顔をしかめてしまった。
ひどい傷だ。殴られた痣は変色し紫どころか赤黒くなっている。それが小さな体いっぱいにある。山田君は手当てをするのに触れるときビクッと体を震わす。
ごめんな。早く終わらすから。
「よし」
最後に背中に湿布を貼って俺は立ち上がった。
「淳也」
「おぅ」
呼んだら、すぐにきた淳也に笑う。
最初のコメントを投稿しよう!