おとまり会

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薬箱を持って寝室を出ると山田君が虚ろに宙を見ていた。その姿に胸が痛くなる。 「山田君…誰にされた?」 「な、何をですか?」 「ごめん、山田君。辛いだろうけど言ってくれ…君はいつから誰に暴力を受けてた?」 俺の言葉に目を見開く山田君。 「な…で」 なんで、分かったかって言いたいんだろう。 「わかるよ。わかる。ごめん。気づけなくて」 「ぼっ僕…ふぇっ」 「泣いていい。我慢なんてしないでいい。辛かったな。痛かったな。もう我慢しないでいいから」 優しくゆっくり頭を撫でる。 張りつめていた糸が切れ、子供のように泣き出す山田君をそっと抱きしめ背中をさする。 「なんっで、僕な…の。僕はっ…千晴君なんてっ好きじゃ、ないっのに!!やきもちでっ…叩いてっ…蹴って…こわ、こわがっだ」 途切れ途切れに言葉を紡いで俺の質問に答えてくれた山田君。 「うん、頑張ったな。言ってくれてありがとう」 「ふぇっ…かいちょ~!!」 山田君はわぁーんと泣き出して俺に抱きついてきた。 ぐ~~ 泣き声とともに部屋に響いた腹の音。 「山田君、お腹空いたんだね」 「ごっごめんなさい!!最近食べなくても、お腹なんて鳴らなかったのに」 「お腹が空くのは良いことだ。ご飯食べようか。けど、その前に手当てさせてくれ」 「いっいいです。自分で」 「触られたくないのは解る。けど、背中は自分じゃ出来ないだろう?」 「…ごめんなさい」 「謝らないでいい」 そう言いながら、山田君の服をめくりあげて、思わず顔をしかめてしまった。 ひどい傷だ。殴られた痣は変色し紫どころか赤黒くなっている。それが小さな体いっぱいにある。山田君は手当てをするのに触れるときビクッと体を震わす。 ごめんな。早く終わらすから。 「よし」 最後に背中に湿布を貼って俺は立ち上がった。 「淳也」 「おぅ」 呼んだら、すぐにきた淳也に笑う。
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