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「やーまーだー」
「うひゃい、ごめんなさいお父さん。でも僕がいるのに始めないで」
「…そうだな。わりぃ。あ~、山田、闇医者でいいなら俺直属の部下を紹介するが?」
「闇医者ですか?」
「あぁ。腕は勿論いいぜ?それに家族にも知られねぇ。どうだ?」
山田君は少し考えてから口を開いた。
「ごめんなさい。よろしくお願いします」
その返事を聞き、淳也は満足気に笑った。
「おぅ」
そして携帯を取り出し、誰かに向かって短く伝えた。
「あぁ、俺だ。寮の生徒会フロア、一番奥の部屋に治療道具一式持って今すぐ来い」
そして携帯を切る。
「淳也、今すぐって」
「まぁ今すぐ来ても車で三時間は軽くかかるが…それまで山田は詩音の渡した薬飲んで寝とけ」
「そうだな。山田君、お医者さんが来るまで、俺のベッドで寝ててくれるか?」
「あ、はい」
山田君が薬を飲んだのを確認して、山田君の手を引いて寝室に向かう。ベッドに寝かせて布団をかける。
「お母さん、ありがとう」
「ん。山田君が怖い夢を見ませんように」
「…お母さんが僕の本当のお母さんだったら良かったのに」
その言葉に目の奥がツンとなる。山田君はこんな小さい体にどれだけの物を抱え込んでいるんだろう。
それから俺は千恵さんの様に、山田君が眠るまでずっと頭を撫でていた。
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