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寝室を出ると淳也がパソコンから顔を上げて俺を見た。
「寝たか?」
「あぁ。今寝付いたとこだ」
「そうか。それで、詩音、綾と大地は手を出していなかった、というか何も知らなかったようだ」
その言葉を聞いて安心する。山田君の言葉を聞いて、怖かったのだ。綾も大地もそんな事をするとは思えなかったけど、俺は根っこの部分で人間を信じられていないから。人は何をするか解らない、それが頭を支配しているから。怖かった。だけどそれは思い違いで本当にほっとする。
「手を出したのは、一年のスポーツ特待生の相良とSクラスでは珍しい金髪の葉山。手を出したのは俺がマリ…転校生から離れてかららしい。風紀には連絡しといた」
「風紀はどんな処分をすると思う?」
「俺としては手緩いが、相良は特待剥奪。葉山は1ヶ月の停学だろうな」
相良は特待剥奪されたら学園にはいられなくなるだろう。それだけ、この学園の費用はバカ高い。だけど、それは特待契約時の書類に書いてあったはずだ。俺の書類にも書いてあったのだから。
『もし風紀委員会に捕まるような行為をしたならば、その者を特待枠から問答無用で外すとする』
何を当たり前な事を、と思ったけど、どうやら理解していない者もいたらしい。相良は後悔するだろう。けど、俺は優しくないから自業自得だとしか思わない。人一人を傷つけたんだ。誰に咎められても、優しくなんてしたくない。
ただ、死ぬ訳じゃないから、いつでも這い上がろうとすれば出来るはずだ。学園にいなくても。
だけど葉山に関しては本当に手緩い…
「停学なんて、ただの休暇と同じだ」
「そう思って、葉山家に監視カメラの映像を送っといた。今頃、当主の爺さんはお怒りだろうな。あそこの爺さんは芯の通った人だから、葉山を後継ぎから外すだろう」
ニヤリと笑った淳也に、純粋に凄いと思う。
「俺は…何も出来なかった」
俺はただ怒っていただけだ。そんな俺に淳也は笑っていう。
「詩音は山田の傷を癒やす。汚れ役は俺の仕事」
「そんな…」
汚れ役だなんて、そんな事はないだろう。それに傷なら淳也だって。
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