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「総司、実は私は父親になるんだ。」
私は山南さんの急なその言葉に一瞬反応ができなかったが驚く。
「まだ生まれるのは夏の呉れごろだが…。今本当に幸せだ。」
「だったら尚更…「だからこそ一人で逃げるなんて出来なければ、身重の彼女に無理な負担をかけることもできない。たとえ子供の顔が見れずとも、二人が生きてさえいてくれれば私はそれで満足なんだ。二人に恥じる生き方をするくらいならば、新選組総長として立派に散っていきたい。」
山南さんに一体何があったというのか…
だが聞く限り彼女と子供に危険が降りかかっているのだろう。
「それでお願いがあるんだ。」
「…なんですか…。」
「彼女を迎えに行ってほしいんだ。店の女将さんにはもう金は渡してあるし、たいして綺麗な場所ではないが長屋と当面の生活費も用意してある。場所はこれにしるしてある。」
山南さんは長屋の場所をしるした紙を手渡してくる。
私は黙ってそれを受け取る。
きっとこの人は意見を変えることは決してないだろう…。
意外にも頑固な一面のあるその性格を私は知っている。
自分を無理矢理納得させていると頬を流れる温かいものに気がつく。
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