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「山南はん!!」
明里さんは永倉さんに馬からおろしてもらうとかっしに急いでしがみつく。
するとその声を聞いて山南さんは閉じていた窓の障子を開ける。
「明里…。」
「嫌どす!うちのこと置いて行かんといて!身請けかてしてくれはったのにっ…!赤子はどないしはるのっ!?」
明里さんは僅かに除かせる山南さんの顔に手を伸ばす。
それを山南さんは悲しそうな顔で握りしめる。
「すまない明里…無責任な私を一生恨んでくれても構わない…。だが一つだけお願いがあるんだ。どうか…どうか私と君の子だけは無事に産んでくれ…そして立派に育ててやってくれ…その子と幸せに暮らしてほしい。それが私の願いだ…。」
「…やったら…せやったら…。」
明里さんはただただボロボロと涙を流す。
声を出して泣くのを我慢しているのかその背は上下に痙攣しているかのように小さくはねあがる。
「本当にすまない…。」
しばらくの間沈黙が続く。
そして無理矢理絞り出すような小さな声が聞こえはじめる。
「…ったら…ら決めて…。」
「うん?」
「…うちも山南はんに出会ってからずっと…命がけで日々過ごしてはるんやし、いつかこんな日がくるんやろなって少しやけど覚悟はしてはりました…。せやけど、それやったらせめて…せめて赤子の名前くらい決めたって…うち、自分の一生をかけてこの子を…山南はんの子を幸せにしてみせるから…。」
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