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そんな光景を見ているとふと永倉さんに肩を叩かれた。
「そろそろだろ…。俺たちも準備すっぞ…。」
「…はい…。」
わたしは山南さんの最後を見届けるため、彼の最後の光景になる部屋へと足を運ぶ。
その間にも二人の声は聞こえてくる。
「そうだな…色々考えてはいたんだが…。永遠と書いて『とわ』なんてどうだい?」
「とわ…?」
「あぁ。私はもう明里の…二人の側にはいられない…。だがこの魂はいつまでも二人の側にいて見守っていよう。それに何より、私の二人に対するこの気持ちはこの身が滅びたとて無くなることはない…。愛してるよ…誰よりも深く…私は二人を愛してる…永遠(とわ)に…。」
「うぅっっ…。」
「山南さん、そろそろ…。」
「わかった…。明里、最後に君に会えて本当によかった…。どうか幸せに…。」
「山南はんっ…!!」
パタンと窓の閉められる音がわたしにも聞こえてきた。
明里さんは少し呆然として、かっしを握る手を緩めることもせずに力なく足を曲げる。
「っ…、…ぅっ…!!ぅぁああぁあああああっっ…!!」
わたしと為三郎くんはただその光景を黙って見ていることしかできなかった。
わたしは狂ったように大声で泣いている明里さんをみて本当に山南さんが死んでしまうのだと改めて実感する。
そして再び枯れることを知らず流れてくる涙を拭きながら、山南さんの切腹の間へと向かった。
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