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途中巡察をしていた原田さん達の組に会いからかわれたが沖田さんは羨ましいでしょうと普通にかわしていた。
甘味処につくとそこはいつもと変わらず繁盛していた。
「私は餡蜜をください。」
「じゃあわたしも。」
店員の若い女の人、ようは看板娘のお姉さんはいつもありがとうと沖田さんに挨拶をする。
「…仲がいいんですね…。」
「そうなんですよ。先程の方、ミツさんっていうんですけど私の姉上と同じお名前なんですよ。」
「そうなんですか。」
「あれ?もしかして焼きもちですか?」
ちょっとふてくされぎみのわたしの顔を見て沖田さんはアハハと笑う。
そんな沖田さんにまた少し拗ねると近くから気になる話が聞こえてきた。
「そういえば聞きはったか?壬生狼の…。」
「山南はんやろ?驚いたわぁ。」
「あないにええお人切腹させはるなんて、やっぱり壬生狼はろくなもんとちがうわ。」
「ほんまや。うちんとこのチビにもようしてくれはったのになぁ。」
「……。」
ちらっと見てみれば仕事の休憩中っぽい男が二人、眉をひそめて話をしていた。
「歩来さん。」
「は…っ!?」
名前を呼ばれて振り向くと、いつの間にか来ていた餡蜜をタイミングよく沖田さんはわたしの口に入れて食べさせる。
「あ、うまく入りましたね。」
嬉しそうに言う沖田さんは隣の話には全く無関心というようにもう一度食べさせてあげようか?と聞いてくる。
わたしはそれを恥ずかしがっているのをバレないように拒否するとつまらなさそうに口を尖らさせられた。
「最近歩来さん冷たくないですか?」
「なんですか急に。」
「だっていつも難しそうな顔をしてばかりで私の相手してくれないじゃないですか。今までは毎日寝る前に一緒に本読んだりしに部屋にだって来てたのに最近全くですし。」
「それは…わたしだってもう子供じゃないですから。それに夜に男の人の部屋に行くなって教えてくれたのは沖田さんじゃないですか。」
「あれ?そうでしたっけ?」
知らなぁいと美味しそうに沖田さんは餡蜜を食べる。
なんだかもう呆れてツッコむ気力すらないまま、わたしも餡蜜を食べることにした。
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