降格

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信じられないという顔で沖田さんを見ていると、沖田さんはニコッと笑って話始める。 「私には二人の姉がいて、両親を早くに亡くしてしまったので上の姉に育てられたんです。私は本来長男なので家を継はずだったんですが、まだ私が小さかったために家を継ぐため姉がお婿さんをもらいました。でもそれでも我が家は決して裕福とは言えなかったんです。」 わたしは初めて聞く沖田さんの昔話を真剣に聞く。 「いわゆる口減らしで近藤さんのいた試衛館に内弟子としてお世話になることになったんですけど、そこの奥方がまた随分と私を嫌っていたようで日々ほんのささやかなことで叱られていました。そんな毎日と離れてしまった姉が恋しくて…。よく一人で泣いてたんです。でもそんな私を近藤さんはとても可愛がってくれて、あの人の前でだけは常に笑顔でいられました。それで言われたんです。」 沖田さんは本当に嬉しそうな顔でこちらを振り向く。 「お前の笑顔は周りの人々を優しくする笑顔だ。泣きたいときもあると思う。でも泣くより笑えって。嫌なことがあっても笑っていればきっといいことが沢山訪れるぞって。それから出来る限り笑うようにして、気がついたら奥方も優しく接してくれるようになったんです。だから悲しくなっても辛くなっても私はできるだけ笑顔でいるようにしてるんです。それにほら、沈んでる顔より笑ってる顔の方が見てる方もいい気分になるでしょう?」
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