テッキョウノアクリョウ

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~4日前~ 今日もいつもと変わらず自転車で登校する予定だった。 家から学校まではおおよそ7キロあり、40分くらい前に家を出れば余裕を持って学校に行ける。 しかし、今日は朝から雨だった。 「親父!定期貸してもらうわ!」 そう言って俺は親父の机から電車の定期を取り、家を出た。 親父の会社は月曜日が休日なんで、今日は定期を借りられる。 この今日の月曜日という日に感謝したい。 「ドアがぁ閉まりますご注意くださぃ」 (シュゥー ガシャン) 全力で走ったかいがあって、なんとかギリギリの時間の電車に間に合った。 だか安心もつかの間、 鮨詰め状態の車内 さらにベトベトに濡れた傘が押し付けられて不快度MAXだ・・・ 満員電車に乗り慣れない俺にとってはまさに地獄絵図。 俺はその地獄絵巻を舐めるように見渡した。 友達が同乗していれば少しは居やすくなるだろう。 しばらく見回していると、自分の学校の制服を着た者を一人見つけた。 女子だ。 後ろ姿しか見えないが、髪はショートでストレート、小柄で肌は白く透き通っている。 好みだ、後ろ姿は超どストライクだ。 俺は何かに引っ張られるように少女の方へ体を進めて行く。 迷惑そうに睨む者も気にせず人間の密林を掻き分け、やっとの思いで少女の半径3メートル以内に入った。 ここまで来て気付いた事が一つある。 俺が彼女の方に行くのは自分の意志では無いという事。 確かに彼女の顔を見たいとは思うが、俺にはこんな人ゴミを掻き分けてまで行こうとする行動力なんて無いはず。 そう、正に"何かに引っ張られる"ようだったのだ。 (キィィィガコンッ) 急に電車が止まった。 「只今ぁ~車両故障のため~緊急停車しております。復旧までぇ~しばらくお待ち下さい」 どうやら車両が故障したらしいな。 車内では短気なオヤジのヤジとそれに対して怒鳴る声が飛び交い、耳がもげそうなくらい五月蝿い。 そのうち学生同士も話し始め、車内アナウンスも聞こえにくくなった。 そんなやかましい車内とは対象的に、ドアの前の少女は静かに冷静に窓の外を覗いている。 彼女の目線を追うと、そこには鉄橋があった。
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