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窓の外を見て初めてこの車両がちょうど鉄橋の真ん中辺りにある事に気がついた。
ドアの窓越しに鉄橋を見下げる少女の目は一瞬険しくなる。
その後間もなく
現象は起こった。
それまで酷くざわついていた乗客達が一瞬にして静まりかえる。
最初は俺も何が起こったのかわからなかった。
(ガタ・・ガタガタ・・・ガタガタ)
不自然に不規則に音が鳴っている。あの少女の方からだ。
よく見ると、少女の目の前のドアが
ドアがひとりでにガタカダ揺れているのだ。
誰も手を触れていないのに、まるで人が揺らしているように。
「キャァァァァァ!!!」
誰か解らないが一人の女性の叫び声を発端に、車内は大パニックになった。
乗客はドアから少しでも離れようと我先に隣の車両へと移動している。
俺はその人波に押し流されてしまい、完全に身動きが取れなくなってしまった。
その時また一瞬見えた少女は、やはり周りの乗客とは対象的である。
ポルターガイストとでも言うのか、この現象に対して全く怖れる事なくただジッとドアを見つめているのだった。
いったい彼女には何が見えていたのだろうか。
結局この騒ぎのせいで電車は動かなかった。乗客は一度電車から降りるように指示が出たため、ドアの所に付けられた臨時用の階段を下り皆外へ解放された。
中にはあのパニックで圧迫されて怪我をしている人もいたようで、救急車のサイレンが微かに聞こえる。
この後俺は、ドアの前にいたあの少女が気になり探そうとしたが、こんな人ゴミの中では当然見つかるはずもなかった。
この日は電車の事故に巻き込まれたという事で学校を休む事にした。
翌日、この日も雨。
昨日の事件がトラウマになっていたため、わざわざバスで遠回りをして学校に行った。
電車で行くより少し高いが、ジュース一本我慢すれば済むこと。
そりゃジュース一本より自分の身の方が大事だからな。
教室に着いてから窓側の1番後ろの席で漫画やアニメの主人公にでもなったかのように考えに耽って俺は溜息をつく。
「はぁ・・・」
(トントン)
「のワッ!?」
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