故に1話

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世界なんて、9割方何かに隠されている。誰かがそう言った。それだけ世界はまだまだ謎と劇的な事が起きる事がある。此処にいる安里莱も、そんな劇的な事に巻き込まれようとしている。何故?それは後に知ることだ・か・ら… 2011年の夏、中学2年生の彼女に夏休みが訪れようとしていた。まだあどけなさの残る顔に大きなリボンを頭に身につけ、セミロングの髪が夏風になびく中学校へ向かっていた。 「バス遅いな。今日は夏休み前最後の日なのに…」 彼女は、私立の女子中学校に通う普通の人間だ(此処重要ね☆)。家から距離がある為、毎朝こうしてバスで登下校をしている。ちなみに、セーラー服が気に入った為この学校に通っている。地元の中学でも良い気がするが…まあ良いだろう。 「加奈にメールしてみるか。バス遅れそうって…はぁ、ついてないな。遅刻したらどうしよ…」 どうやら莱が乗る筈のバス、未だに来ないようだ。10分経過したが、このまま来なければ本当に遅刻である。始業式早々遅刻なんて洒落にならないだろう。苛立ちからか、携帯でメールを打つ手に力が入ってしまう。真面目な彼女にとってはゆゆしき問題だろう。 にしても、今日の気温はまたしても最高気温を更新しそうな猛暑である。彼女の額からも一筋の汗が流れ落ちた。 「コレは遅刻確定だろうなぁー…言い訳でも考えておこう。何だろうかな…例えば事故とか。ってばれるよね。やっぱり…あーあ、いっそ学校がなくなれば良いのに」 学校がなくなれば良いのにってか。ふふん、その願いを叶えてあげても良いかもしれぬ。儂がちょっと工夫すれば、世界は思いのままだ。 ほれっ! ちゃりん… 「…ん?今何か落ちたような音が…雨かな…?いや違うな」 ほれほれ莱、目の前を見てご覧なさい。君にプレゼントを差し上げようと思う。その視線を前からやや右にそらせば…ね。 「あれは、ペンダント?しかも綺麗だわ」 彼女の目の前に落ちたのは、エメラルドグリーンの宝石のペンダントだ。莱はそれを拾い上げると、しばしその美しさに言葉を失った。真ん中から放射線状に輝くその様、君なら気に入る筈だからね。
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