不幸という名の序章・1

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「どうして、肝心なゴーレムさんは居なくて、他の魔物ばっかなんだ……」 こういう事だ。 草むらの中に埋まれた、地中へ続く階段を下りる途中で壁から槍が飛び出す罠をギリギリでかわしたと思ったら、骨の亡者・ボーンウォーリアが大群でお出迎え。 ボロボロのアーマー、使う気の無い小型の盾・バークラーを身につけ、錆びれたサーベルを無茶苦茶に振り回すだけ……そんな低級な亡霊系統魔物だが、狭い通路で30、40体との戦闘。 そんなものを、襟元が大きく開いた長袖の黒いシャツに、丈の無駄に長い半袖の白いコート。 それに裾がだぶっとした黒のズボン、という殆ど防御力のない格好でするもんじゃないと、肩にかかる程度まで伸びた鳶色の髪を掻きながら、深い溜め息を付く。 何が楽しくて、一人でホコリ臭い幾つかの松明しか灯ってないような地下遺跡でちょっとしたバトルロイヤルなんかするもんじゃないと半分以上本気で思う。 おかげで、唯一の武装である、安物のロングソードの刃がかけてしまった。 「んで、何だかんだで……討伐完了ってか?」 髪よりも深い色をした、恐いお友達に人気の瞳で周囲を見渡す。 相当、不機嫌なオーラ全開の今の状態で町を歩けば、18年の経験上、100%で何らかの不幸に巻き込まれる筈だが幸か不幸か、この場にレオン以外の人は居ない。 耳を澄ませば、物音一つしない。鼓膜を突くような静寂。 「……嘘。マジで今、完全孤独状態!?」 無駄だって分かってる。 それでも叫ばなきゃこの居た堪れない気持ちを少しでも晴らしたい。 ……素晴らしい程に無反応。 自分のやけにエコーの聞いた声が反響した後、ぐすん、と何かをすする音だけが一つ小さく聞こえるだけだ。 「いや……別に、ここで床が抜けたり、天井が崩れてきたり、どこからとも無く鉄球や濁流が押し寄せるとかそんなイベント求めてないのだけどね。何も無いってのは、それはそれで心にくる辛いものがあるんだよね……」 不幸に対する耐性が最近出来てきたんじゃないのか?と薄っすらと思うのは決して、若干の物足りなさを感じている訳では無い。 ……絶対、 断じて無い。
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