不幸という名の序章・1

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(……マジで、どうしよう?) 腰の少しごっついベルトについているポシェットから小さな袋を取り出す。 その口を開くと、たった10ガルド。 一つのリンゴを買ったら完璧に無一文になる額しかない。 それでも貴様、財布か! ……とか、ツッコミたくなるが、一人でそんなこと言ったら本格的に寂しい人になりそうだから止めておく。 「あ~あ、何でもいいから稼がないと、今日の宿も取れないな……」 このままゴーレムを探すのも良いが、それとの戦闘中に欠けた刀身がへし折れでもしたら洒落にならない。 ツケてもらい鍛冶屋で直してもらうか、依頼所にある貸し出し用の武器を借りるにしてもここは、やはり一端、村に帰るべきだろう。 ゴーレムの件にしても、他に楽して金になりそうなのがあればそれに乗り換えればいいだけの話だ。 「さって、そろそろ――」 レオンはロングソードを杖代わりにして立ち上がる。 そして、何となく壁に触れた。 「行こうかな、って……ん?」 掌に伝わる感触はザラザラとした壁のものでは無く、つるつるとした丸みのあるものだった。 よく見てみると、丁度触れている所に拳程の大きさの宝石が埋め込まれている。 そして頼んでもいないのに、ご丁寧に宝石が脈打つ様に紅く点滅し始める。 まるで血を循環させる心臓を思わせた。
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