涙―AMETHYST

4/10
前へ
/121ページ
次へ
お母さんは不安だった。 何の約束もないまま、お父さんの連絡を待つ日々。 ちょうどその頃、お母さんは一緒に就職活動している同級生から、内定を貰えたら付き合って欲しいと告白されていた。 就職に対する不安も重なり、お母さんの心は揺らぎ始めるのだった。 お父さんには連絡がつかないまま、年が明ける。 就職の内定は貰ったが、心にぽっかりと空いた穴はそのままだった。 そして2月。お母さんの誕生月だ。 例の同級生から、内定祝いと誕生祝いとを兼ねて、数人で飲み会をしようと誘われた。お母さんは少し迷いながらも、参加する事にする。告白への返事も先延ばしに出来ないと考えたからだ。 飲み会は終始楽しい雰囲気だった。みんな就職が決まった安心感で、話も弾んでいた。彼も告白については触れてこない。 お母さんはその心遣いを嬉しく感じながら、和やかなムードの中、会話を楽しんでいた。 みんなは盛り上がり、そのまま二次会に向かう事になった。しかしお母さんは、やはりお父さんの事が頭から離れず、二次会への参加は辞退したのだった。 みんなと別れて帰路に就く前に、同級生に声をかける。 彼も察したのだろう。 みんなにはお母さんを送るからと声をかけ、歩き始めた。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加