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ラボに入り、そこで漸く後ろを振り返る。
ジェシカとサムが飛び込んできた。
最後までついて来ていたゾンビは、サムが倒したようだ。
私は急いで扉を閉め、ロックした。そしてケージを探す。あのマウスのケージだ。
あの時、マウスはケージの中から出てないのだ。
漸く見つけたマウスから、傷つけられないように注意しながら検体を採取する。
それを顕微鏡で見ると、私の考えた通りだった。
マウスの細胞は生きて、動いている。ただ、かなり老化が進んでいた。
私はもう一つの考えを試す為、そこに自分の血液を垂らしてみた。
すると、マウスの細胞が血液の細胞を、まるで喰らうかのように包み込んでいく。
それが終わると、マウスの老化していた細胞は、新しいものになっていたのだ。
つまり、ゾンビが人間を喰うのは、細胞を維持する為のゾンビ独自の生存本能からなのだろう。
我々が開発した薬は、劣化した細胞が新しい細胞を吸収する事で、蘇生する効果があったのだ。
そしてそれが、私のもう一つの考えだったのだ。
今から作るワクチンは、それらの細胞を中和、つまりは殺す為のものになる。
私は資料を探し出し、研究に没頭した。
早くしなければ、非常電源は長くは保たない。それに、ラボにある食料は極僅かだ。
電源が落ちれば、ラボの機器は使えなくなる。電子ロックも解除され、ゾンビが押し寄せてくるだろう。
餓死もゾンビに喰われるのも嫌だ。
幸い、必要なものは揃っていた。
私は理論通りに合成していく。やり直す時間はない。
気ばかり焦りながらも、ジェシカとサムに励まされて、漸く完成を迎えた。後はあのマウスで試すだけだ。
薬剤の入った注射器をケージの隙間から差し込む。失敗は許されない。手が震える。
暴れるマウスにどうにか針を刺し、薬剤を注入した。
そのまま、様子を窺う。
ジェシカとサムも、緊張した面持ちで見守っていた。
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