02---兄弟の部屋

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  「お兄ちゃん」 多分、昔の俺はただひたすら純粋で、何も知らなくて、それで兄貴のことが大好きだったと思う。 現在母さんと住んでいるマンションより、もう二部屋多い3LDKのマンションに、両親と兄貴と四人で住んでいた。俺が小五の時までのことだ。 「ひな、今日のテストどうだった?」 「九十四点! クラスで一番だったんだよ」 テストとか体育とか、頑張ったんだよって言うと、太陽と同じ様に俺の頭にぽん、と手を乗せて誉めてくれる。 そんな優しい兄貴だった。俺のことを『ひな』と呼ぶ唯一の人だった。誇りであり、尊敬して止まない存在だった。
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