1695人が本棚に入れています
本棚に追加
「久しぶり、ひな」
「お……兄、ちゃん?」
扉の向こうに立っていたのは母ではなく、別々に暮らし始めてから二ヶ月間、全く連絡を取っていなかった兄貴だった。
俺はどうしていいか解らず、呆然と立ち尽くしていた。
俺と同じだった黒髪が、赤茶色に変わっていた。優しそうな兄貴の印象は消えてしまっている。
「……母さんは?」
「まだ仕事から帰って来てないよ。……とりあえず、中入って?」
俺は兄貴を招き入れた。兄貴が脱いだ靴は、一緒に住んでいた時から履いているスニーカー。
「連絡くれれば……俺、寂しかったんだから」
最初のコメントを投稿しよう!