02---兄弟の部屋

8/12
前へ
/210ページ
次へ
  「久しぶり、ひな」 「お……兄、ちゃん?」 扉の向こうに立っていたのは母ではなく、別々に暮らし始めてから二ヶ月間、全く連絡を取っていなかった兄貴だった。 俺はどうしていいか解らず、呆然と立ち尽くしていた。 俺と同じだった黒髪が、赤茶色に変わっていた。優しそうな兄貴の印象は消えてしまっている。 「……母さんは?」 「まだ仕事から帰って来てないよ。……とりあえず、中入って?」 俺は兄貴を招き入れた。兄貴が脱いだ靴は、一緒に住んでいた時から履いているスニーカー。 「連絡くれれば……俺、寂しかったんだから」
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1695人が本棚に入れています
本棚に追加