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「お弁当忘れてるよ!」
「あ!わりぃ…」
いつも通り弁当を手渡すと、見送りを済ませ朝の片付けを手際良くこなした。
「やばっ!私も遅刻しちゃう」
急いで支度を整えると、慌てて家を出た。
安藤琴美 28歳。
夫の文也と結婚して4年になる。
妊娠したら仕事を辞めるつもりでいたが、なかなか恵まれずにいた。
琴美自身も大きな仕事を任せられるようになり、子供より仕事優先に気持ちが傾いてしまっていた。
「おはよう!琴美」
「おはよう。寧々」
職場に着くと親友の片倉寧々と挨拶を交わす。
「今日から人事異動で新しい部長さん来るらしいよ」
「また部長変わるの?」
「まぁ仕方ないんじゃない?あの部長セクハラ酷かったからね…」
「確かに…今度の部長ってどんな人?」
「かなりイケメンの35歳で独身!」
「寧々の情報網には脱帽するわ」
制服に着替え終わると琴美は自分のデスクに座った。
「琴美はいいわよ。優しい旦那がいるんだから。私も落ち着きたいのよ…親も結婚ってうるさいし」
「旦那か……」
「何?喧嘩でもしたの?」
「ううん…」
結婚して4年。
喧嘩1つせず、ごく普通の結婚生活を過ごしている。
子供が出来ない事も何も言わず、仕事優先している事も理解してくれている文也には感謝している。
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