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阿維 ~記憶~
あれはまだ俺が五才の頃、その時から体が弱かった俺は、よく病院に通っていた。
この日は、持病の喘息の事で病院に来ていた。思っていたよりひどかったらしくその日は入院。病院は嫌いでは無いが夜は眠れない。
案の定、今夜も眠れなかった。俺は、そっとベッドから抜け出して廊下をブラブラ歩いた。
これが全ての悪夢の始まりだった……。
俺は、第二診察の前で立ち止まった。女の人のすすり泣きが聞こえたからだ。
(幽霊!?)
診察室のドアは一センチくらい開いていたから、そこから中を覗いてみた。
「それじゃあ、阿維は助からないっていうことですか?」
「二十歳までもつかどうか……」
「本当に何も方法は無いんですか!?」
「阿維君はとてもめずらしい型なので、ドナーが見つかりにくいのです。残念ですが…………」
――僕、死んじゃうの?
幼いながらにそんなことを思ったことは覚えている。
俺は怖くなってその場を早足で立ち去ると、ベッドに潜り込んだ。余計なことを考えてしまいそうで、怖かった。
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