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「桜、綺麗ですね。」
そよ風に舞う桜をうっとりと見つめながら、花梨が言う。
それに頷きながら、珠姫は箸をほぼ空になった弁当箱の上に渡した。
「そうだねぇ。」
同じように桜を見ていた珠姫は、チラッと後ろを見、言う。
「後ろは花より団子みたいだけど。」
「ちょ、この卵焼き美味っ!! もいっこ頂戴! もういっこ!」
「ざけんなミカてめっ! 俺の甘玉子だっ!」
半分だけって約束だろ!!と言いながら、ミカから弁当を遠ざけていると、もう半分を珠姫がつまみ上げて行った。
珠姫はそれを半分に千切ると「私も味見したいです。」と言う花梨に渡した。
「甘っ。 これ卵焼きって言えるの?」
と、ちょっと顔をしかめる珠姫。
「子供の頃の懐かしい味です。」
と、にこやかに微笑む花梨。
「俺の甘玉子ー!!」
俺のその叫びは、桜舞い散る中庭中に響き渡った。
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