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帰って携帯のチェックをするとやはり上原からのメールが来ていた。
帰ったらメールちょうだい。
と相変わらずの一言だった。
しかしその僅か十数文字が綾子にとってとてつもなく愛おしいものに感じた。
上原と別れようと決めたばかりなのに……。綾子は自分の感情の身勝手さに苛立ちを覚えた。
やはり上原と別れるなんて出来ない。なんだかんだ言ってももう完全に好きになってしまっている。
親友と恋人なんて天秤にかけることが間違っているのだ。
自分にそう言い聞かせたが、結局は自分の都合のいいように考えているだけだ。感情どころか思考まで身勝手になってしまっている。
こうなってしまった以上、もう両方なんて選べないのだ。仮に上原に頼んで黙ってもらっても、そんな状態で美紀に告白をさせるのは一番残酷なことだ。
しかし、今さら美紀の告白を止めることは出来ない。告白をさせなければ美紀をだましたことになる。
そうなればもうこれから先ずっと負い目を感じながらの友達付き合いになる。それはもはや友達とは言えない。
友達をだましたくない、恋人と別れたくない、その二つの感情が綾子の体を挟みこんで押しつぶしてくる感覚になった。
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