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家に帰ると真っ先に綾子は自分の部屋の携帯電話のチェックをした。
お母さんが塾に行っている間は勉強に集中できなくなるから家に置いて行きなさいと言って、充電スタンドに残っていることを毎日確認している。一度、こっそり持ち出して、こっぴどく怒られたことでそのことを知った。
そんなことをしなくてもどうせ勉強なんてしてないのに、と心の中で言い返すのが精一杯だった。
携帯には一通のメールがあった。ドキドキしながらそれを開いて送信者の名前を見ると、期待通りの名前があって思わずにやけてしまう。
メールは上原からだった。
実は綾子と上原は二カ月前から付き合っている。
今何してんのー?
といつものように一言しかないが、送ってくれるだけでも嬉しい。
急いでメールを返信した。
携帯の送信画面が表示され、メールが送られている。この時間が一番緊張する。こうした方が良かったんじゃないか、こっちの絵文字の方が可愛く見えたかな、と一瞬の時間に様々なことが頭を駆け巡る。
メールが送信され、『送信しました』という携帯からの報告にOKと返事をしたところで、ふと美紀との会話を思い出した。
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