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この二週間の間に美紀は上原に告白する。それを自分が手伝うのだ。
美紀が上原のことを好きなのは知っていた。もちろん、綾子が上原と付き合う前からだ。
それでも、綾子は上原に告白した。こっそりとメールアドレスを書いた手紙を渡したのだ。
親友を裏切った罪悪感はあった。綾子の方から美紀に上原のことを好きだと言ったことはない。
本当のことを言えば、初めから上原のことが好きだったわけじゃない。
美紀が上原のことを好きだと言い出してからだ。他人が褒めるものは例えどんなガラクタであれ、いいものに見えてしまう。だからこそ通信販売の客にサクラが必要なのだ。
当たり前の話だが、上原がガラクタというわけではない。むしろ、女子の人気は高い方だ。
元々良いものを美紀が褒めまくるものだから、自分もついその気になってしまった。気が付けば、手紙を渡していた。
なぜあんなことを言ってしまったのかと自分を責めたくなった。
それでも、どうせ転校するんだから、とは言えなかった。美紀は一番の親友なのだ。それは引っ越しても変わらない。
そう言えば、英語の教科書に、『White Lie or Black Lie』という文章があった。
このまま、何も知らないふりをして告白を手伝うのは白い嘘なのか、黒い嘘なのか。
既に真っ暗になった携帯電話の画面を見つめながら綾子はじっと考えていた。
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