そして、姫の受難は始まった。

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リュカは、外の騒がしい雰囲気を感じ目を覚ました。気怠い身体を無理に起こして門の見える窓の方へ歩み寄る。 窓を開ければ涼しい秋風がフワリとリュカの身体を触れて消える。 ああ、もう秋なんだ。 ぼんやりとそんなことを考えていると門の辺りがさらに騒がしくなる。 まだ覚めきらない目を擦って、外に目を凝らすと三台の馬車が止まっているのに気づく。 (あれは、お父様と兄さん達の馬車だわ。) 馬車の周りで城で働くメイドや従者達が慌ただしく動いていた。 (・・・何かあったのかしら。) リュカは、普通ではない雰囲気に不安を覚えた。 次期王になる長兄は、勉強に忙しく、次兄は、補佐役として長兄と共に外出することは珍しいことではない。ただ、王である父は、滅多に外出をしない。しかも、あんなに慌ただしく。 (まさか、戦争が始まるわけではないわよね。) リュカは、最悪な想像に首を振る。 (ありえないわ。だって、この国は三百年平和を保っているのよ。) リュカの父が治める、このセイノア国は平和な国として名高い。国的レベルや国土は、中の下より少し上くらいの微妙な位置に属しているが、豊かで穏やかな国である。 コンコン 突然のノックの音にリュカは、ビクリと身体を大きく揺らす。 (まさか、本当に戦争の知らせとかではないわよね・・・?) リュカは、呆然とした気持ちでドアを見つめた。
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