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ある事件がきかっけで、東京地検特捜部の若手検事だった玲一と出会った。
付き合っているわけではないが、1年ほど前から、ひと肌が恋しくなると、こうやって体を重ねていた。
玲一は結婚はしていないが、もしかしたら恋人はいるかもしれない、と亜紀は思っている。
それでよかった。
玲一を独占したいとも思わないし、自分のテリトリーに踏み込まれたくないとも思っていたからだ。
仕事で全力疾走することが最大の目的。その休憩場所として玲一の隣があり、ときどき女であることを思い出させてくれる存在だった。
「ええ、殺しです。鍵はここ。帰るときはいつものところに入れておいてくださいね」
だから亜紀は敬語だった。
玲一は冗談めかして言った。
「いつになったらくれるのかな、合鍵」
亜紀はさらりと言った。
「今日みたいなときにこっそり作っておけばいいんですよ」
玲一は少し悲しそうに笑った。知性にあふれ、ハンサムな彼は、そんな表情も絵になるから好きで、亜紀はわざと意地悪を言って、家を出た。
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