狂気の起点

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朝と昼のニュースでの現場中継を終え、事件現場からカメラクルーと一緒に局へ戻ると、午後2時を過ぎていた。 エレベーターに乗りながら、若いカメラクルーと話していた。 「いや、思ったよりひどかったっすね、地面にあんなに血が飛び散るとは…」 殺害されたのは50代の夫婦だった。逮捕された容疑者は大学生の息子。 周辺の住民や、現場の知り合いの刑事の話では、ギャンブルにのめりこみ、借金を背負ったことを両親に責められ、逆上しての犯行だったようだ。 亜紀は一瞬考えてから口を開いた。 「んー、あそこまで猟奇的にやれるかフツー?精神鑑定に回されるかもな…」 仕事場ではいつも亜紀は口が悪い。男社会の中に身を置いているためか、自然とそうなってしまった。そうしていなければ気がゆるんでしまうような気もしていて、わざとそんな口調になっているのかもしれなかった。 12階でドアが開く。男女2人が乗り込んできた。 若いカメラクルーが「わ、龍崎東矢だっ」と思わず声を上げる。 1人はメガネでスラリとしたスーツ姿の女性。 龍崎と呼ばれた男のほうは、手足が長く、背が180以上あった。少しはねた遊びのある黒髪を後ろに流していて、前髪からのぞくアーモンド形の整った二重まぶたは優しげで、しかし眼光は鋭かった。 通った鼻筋や顔の小ささから言っても、おそらくモデルか何かであろうことはわかった。
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