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?『乗りますっ!!』
えっえっ
そう聞こえて、慌てて《開》のボタンを押す。
慌てて手を離したものだからカップラーメンがエレベーター内に散らばる。
その中に、帽子を深く被りマスクをした男の人が入って来た。
恥ずかしくて私は、急いでしゃがむとカップラーメンをかき集め袋に詰め込んでいく。
?『すいません。僕のせいですよね』
私の目の前に差し出されたカップラーメン。
その男の人は、申し訳なさそうにカップラーメンを拾い集めてくれるのを手伝ってくれる。
どうしよう…。
すっごい恥ずかしいっ
自分でもわかるくらい顔が熱くなる。
男の人が最後の一個を拾うと、調度エレベーターの扉が開く。
?『ほんとにすみません。それでは…』
そう言い残すと、エレベーターから降りていく。
お礼言うの忘れたなんて、ぼーとその後ろ姿を見つめる。
閉まっていく扉。
あっ私も降りないとっ
って…えっ?
今の人も…ここの住人さん?
けして長くない部屋までの廊下。大量のカップラーメンを持ちながら、さっきの男の人の後ろを歩く。
やっぱりお向かいさんだよね…。
広い背中を見つめていると、急に立ち止まり振り向く。
急な事に私もびっくりして立ち止まる。
?『…あの何か用ですか』
『…へっ』
想像もしていなかった言葉に、あまりにも素っ頓狂な声が出た。
?『…その…まだついて来るようなら…』
…何。
もしかして、後をつけて来ていると思ってるの?
?『…応援してくれるのは嬉しいけど、こういうことは…
気持ちだけで…嬉しいよ』
そう言って近づいて来たと思ったら、抱えていたカップラーメンの袋を持ち上げた。
…あったまにきた。
私は自分の部屋の前まで行くと、ショルダーバックの中から鍵を捜す。
両手がカップラーメンで塞がれてて思うように捜せない。
それさえも頭にきて、床にカップラーメンを置く。
また中身が散らばった。
やっと自由に動くようになった手で鍵を取り出して、扉を開けた。
まだ袋に納まっているカップラーメンを持ち運び床にほうり込むと、小走りで冷蔵庫へ向かい箱を取り出す。
玄関を出ると、まだ男の人はカップラーメンを持ったまま立っていた。
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