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「とりあえずさ、早瀬さんの席はあそこ…」
そのお方は、
顎で入口一番近くの席を指し、
席を確認させ業務に戻られました。
「あ…ありがとございます。」
今度は決して噛んだんじゃありません。
前置きの「あ…」は、一呼吸です。
そして、その後、少し後ずさった私を見もせず、
「成瀬!」
とても澄んだ落ち着いた低めの声で、どなたかをお呼びし、
そして、その「成瀬」様も、
このお方が大層恐ろしいのか、
「はっ…はいぃ~!!」
と、極度の緊張のこもった返事で机に歩み寄りました。
忠実です…
「お前…こいつの教育係。」
発せられた言葉は、
やはり単語のみ。
「わかりました。」
成瀬様は、幾分なれている分
落ち着きを取り戻し、普通の返事をした後で、私にそれはもうニッコリとほほ笑んで、
「よろしくね…」
右手を差し出していただき、
(ほっ…このお方の部下にも、きちんとした方がいらっしゃったんですね。)
そう思いながら、着慣れないスーツで、緊張のため汗ばんだ右手を拭いてからおずおずと差し出すと、
ぎゅっ~っと握手しようと思いきや…
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