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僕は霊が見える。
道ですれ違ったり、
電車で目の前に立ってたり、
人の霊はみんなげんなりした表情や重々しい雰囲気なので見てて嫌になる。
たまに笑っていたりするけれど、雰囲気が明るい幽霊の場合は死んだ事を理解していない。
そんな幽霊には死んだ事を伝えても、ほかの幽霊のように重々しくなるか、死んだ事を否定して逆上するか、だ。
幽霊相手にゴタゴタを起こしたくないから僕は全て無視する。
けれど、極度に見えてしまうから毎日が疲れてしまう。
隣の空き部屋からの物音や、
犬の幽霊に小便かけられたり、
あと、もう一つ不思議なのは植物の声が聞こえる。
花屋なら問題ないが、街中の木々は大変だ。
ずっと苦しそうにうめいていたりするもんだからヘッドホンが欠かせない。
そんなものばかりで生活を送るのを億劫になっていた時、友達に誘われて天体観測をした。
真夜中マンションの屋上で望遠鏡を設置して、友達が笑顔で「星は素敵だよ、壮大だ。」なんて言っていた。
自信に溢れた笑顔の彼と打って変わってげんなりした表情の僕は背中を押されながら望遠鏡を覗き込んだ。
確かに綺麗だ。
散らかった星屑が眩しかった。
「今日は天気がいいからよく見えるだろう。」
「そうだね、」
僕はここでも見つけてしまった。
死んでしまった命の幻。
星の幽霊だった。
その星はほかの星と比べて少しぼやけて、後ろの星が透けていた。
けれど、それは重々しくもなく、陰気臭くもなく、美しいものだった。
幽霊の中で輝く生命体達。
僕はそれから天文部に入った、星の幽霊を見るために。
それだけ。
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