~アレグレット~

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「ねー名前は?」 「香築 鈴(こうつき りん)です。大学一年」 「俺、中野 月斗。大学一年。こっちは都神 上総(とがみ かずさ)。俺たち幼馴染みで、上総は大学三年ね」 都神さんはろくに挨拶の言葉もなしにタバコを吸っている。 「気にしないでね。上総って誰にでもこうだから」 顔はいいのに愛想がない。 中野君と一緒にいるせいか余計にそう思えてしまう。 まぁ私も人のこと言えないけど。 「あと、敬語いらない。タメじゃん。月斗でいいよ」 月斗君が笑うとなんだか気持ちが軽くなる。 意識して出来ることじゃない。 不思議な人だ。 それにつられたらしい。 「私も鈴でいいから」 初対面の人にこんなこと言うなんて。 「また図書館とかで会うかもな。その時は昼飯でも食べよ」 頷いてから、全く会話に参加しない都神さんに視線を移す。 タバコの灰を落とす仕草。 大きいけど綺麗な長い指。 クセのない黒髪。 なんでも見透かしてしまいそうな強い瞳が印象的な人。 視線が合うと、思い切り顔をそらしてしまった。 そして、忘れていたことを思い出す。 「ごめんなさい。そろそろ戻るね」 「そう言えば連れがいたね。彼氏?」
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