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講義が終わって皆が思い思いに席を立つ。
昨日のファミレスの件があったせいか、だれひとりとして話しかけてこない。
こっちも気が楽で全然いいんだけど。
「香築さん、良かったらお茶でも行かない?」
昨日も誘ってきた人か。
嫌いならほっといてくれればいいのに。
「遠慮します」
即答で答えた私に、笑顔が不機嫌に変わる。
「男性と会う時間はあるのに、あたしとの時間はとれないの?」
「私と一緒にいても時間の無駄でしょ」
片付けて教室を出ようと廊下に向かう途中、周りがうるさくなった。
「まーた誘ってんの?」
「止めときなよ。香築さん忙しいみたいだしさ」
「……分かってるならほっとけつーの」
聞こえないように小声で呟く。
教室を出ると扉を思い切り閉めた。
近くにいた人たちが驚いた顔をしていたけど、構わずに外に出た。
イライラする。
せっかく、今日はいい夢を見れたのに。
次の講義まで時間があるから図書館に行こうとしたのに、苛立ったせいで道を間違えた。
普段は全然通らない場所。
人気がないせいか静かで風の音がする。
「……?」
かすかに聴こえる、音。
人の声じゃない。
でも、聴いたことがある音色。
音がするほうに自然と足が向かう。
次第に大きく聴こえる優しい音楽。
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