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見えてきたのは大きな一軒家。
二階建てで花が綺麗に手入れされていていい匂いがここまで香る。
「ピアノ?」
こんな場所にこんなところがあったにも驚いたけど、間違いなくピアノの音が聴こえる。
家に近づくと、一階はテーブルや椅子が整理されて置かれている。
そして、一番目立つのは黒く艶やかな大きなピアノ。
そこで弾いているのは、男性、かな?
横顔が逆光でよく見えない。
弾いている曲は、音楽の知識もない私でも知っている。
「……カノン」
思わず口にしてしまい、慌ててそこから離れた。
「わっ!」
戻ろうと周りを見なかったのと、こんなところに人がいないという勝手な思い込みのせいで、人に気づかずぶつかってしまった。
「す、すみません」
「いえ、こちらこそ。もしかして見学の方? それともカフェのほうかしら?」
「え?」
「あ、ごめんなさい。ここらへんって用がある人しか来ないからそうなのかなって思って」
意味が分からないと顔に出たらしく、女性は笑顔で答えてくれた。
「あたし楓。良かったらちょっと寄っていかない?」
「え、どこにですか?」
見る限り、周りには木々ばかりで、あるといえばこの一軒家。
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