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あんな出会いから、まさかこんなに親しくなると思わなかった。
あの日のことを思いだす。
「あの、タオル今日持ってきてなくて」
「あぁ、いつでもいいよ。上総に会ったときに持ってたら渡してくれてもいいし」
連絡先を交換したものの、用事もないからメールも月斗君の連絡先を教えてもらった一回だけ。
今のところ図書館でも会っていない。
「上総とあれから会ったりした?」
思わず、手が止まってしまった。
「……会ってはいない」
正確には見た。
でも、逆光で顔はハッキリと見ていない。
私の曖昧な答えに、特に追求することなく笑う。
「そう。もしかして、上総の態度がイヤだったりした?」
「え? 別に全然」
無駄にヘラヘラされるよりよっぽどマシだった。
「良かった。あいついい奴なのに態度があれだから誤解されちゃうんだ。鈴もいい子で良かった」
確かに最初であの態度はそう思われても仕方ない感じ。
でも、
「優しい人、でしょう?」
初対面の人間の心配するなんて、普通はしない。
月斗君が目を丸くして、私の頭を撫でた。
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