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店員さんも手伝ってくれたのは良かったけど、男の声が大きいから注目を浴びつつある。
「……香築さん?」
「あ」
本当の合コン相手参上。
私に声をかけた人以外、周りの女たちが不愉快そうに眉をひそめた。
「なんでいるの?」
「来たかったら言えばいいのに」
「しかも早めに来て何するつもりだったの」
はじめの質問に答えようとする前に、女たちの声が重なる。
ムカつくぐらいの上から目線。
勝手に勘違いした残念な理解力だ。
こんなのと同じ空気すら吸いたくないっていうのに。
無駄だと思うけど、一応言い訳はしておこう。
「あっちが勝手に騒いでるだけだから」
「都合のいい言い訳?」
「そう思いたいなら勝手にすればいい」
「まぁまぁ、皆仲良くあっちで」
「お前ら、何をしている」
耳によく通る低い声。
私たちに渦巻いていたものを一掃したみたいに周りが静かになった。
確か、こいつらと一緒に来ていた。
「あーあ。サイアク。大丈夫? はい」
もうひとり、私にタオルを差し出した。
「迷惑かけてゴメン。クリーニング代出すよ」
「洗濯するから気にしないで」
どうやら、この人とこいつらを黙らした人はマトモらしい。
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