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「そんな簡単じゃないよ」
「じゃあ、賭ける?」
「……」
すぐに頷けなかったのは、昔から拓は、運とタイミングが良すぎるせいだった。
「どうすんだ?」
ニヤリと笑う拓は余裕そうでなんか腹が立つ。
「分かった」
「よし。さっきも言ったように俺は"会いにくる"な。スズは?」
「"会いに来ない"」
あんなこと言ったんだ。
会いに来くるわけがない。
「負けたらどうするの?」
拓の根拠のない確信はあてにならない。
賭けるまでもない。
だから、今回は私の勝ち。
「飯なんかじゃ面白くないよな」
自分がするかもしれないのに、楽しそうに考え出す。
「スズが勝ったら遊園地にでも連れてってやるよ」
「別にいい」
「その代わり」
拓がニヤリと口角をあけ、ビシッと私を指差した。
「俺が勝ったら、お前そいつに謝れよ。ついでに告白しろ」
完全に面白がっている拓に呆れつつ、一応頷いた。
「……会いに来たらね」
「期間は一ヶ月な」
それから拓は、更にデザートまで完食してから店を出た。
「悪かったな。遅くなって」
「平気。いい気分転換にもなったから良かったかも」
気づきたくもない感情に気づいてしまったのは厄介だけど。
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